東京高等裁判所 昭和25年(う)4128号 判決 1950年12月19日
被告人
鈴木弘
主文
本件控訴を棄却する。
当審に於ける未決勾留日数中五十日を本刑に算入する。
当審に於ける訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
弁護人上田成吉の控訴趣意第二点について。
本件記録によれば所論の西山政男は漁夫であつて、昭和二十五年五月上旬頃宮城県塩釜方面に赴いた儘、茨城県那珂郡那珂湊町の自宅に帰らず、其の後同年六月下旬妻子と共に妻の生家の所在地である三重県度会郡北浜村に其の主要食糧等の配給を受ける場所を変更したが、同所に平素居住して居るのは妻子だけであつて、西山政男は依然として同所にも帰来せず、従つて同年六月十五日、七月六日、同二十日原審各公判期日及び同年八月十七日の宇治山田簡易裁判所に於ける嘱託証人尋問期日に出廷して供述することができなかつたことを看取出来るから、原審が右西山政男の所論供述調書を刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号に該ると解したのは相当である。そして右調書は西山政男が同年二月三日頃被告人と面接した際の被告人の供述を其の主たる内容とするのであるが、原審は其の任意性等についても調査し、被告人に其の信頼性を衝く機会をも与へて居ることが本件記録によつて認め得られるから、原審が該調書中の供述記載を本件罪証に供したのは違法でなく、論旨は理由がない。